全国300社以上の事例と統計データからみる整骨院のM&A戦略について
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2極化が進む整骨院業界
整骨院業界は2極化が進む厳しい経営環境下にあり、経営手段の1つとしてM&Aが活発になりつつあります。
2020年4月以降、コロナウイルスの影響で営業自粛や患者が大きく減少したことで、整骨院のM&Aの市場は一気に停滞しました。
整骨院の買い手は譲渡案件の中でハードルを引き上げ、東京23区、千葉、大阪エリアであればかろうじてニーズがある状況となっていました。
2020年8月以降、買い手となる整骨院大手企業は経営難に陥った整骨院企業に対して直接交渉を積極的に行っており、M&Aの譲渡案件の情報が流通しない状況が続いていました。
2020年のM&Aの大部分は救済措置としてのものとなっており、2022年現時点では整骨院業界再編がひと段落したという状態といえます。現状のM&Aの譲渡理由で一番にあげられるのは、コロナ緊急融資により一時的に資金繰りが回復した整骨院事業者の資金が尽きた、または返済がスタートしたことで資金繰りの先行きが見いだせない整骨院事業者が譲渡するケースが増加しています。
例えば、以下が具体的な整骨院業界のM&A事例となります。
2017年時点で14店舗展開していた整骨院Aが、近隣に展開されている整骨院4店舗をM&Aで取得して、シェアを拡大し、業績アップを実現。
現在は自前での店舗展開を含めて26店舗を運営し、
地域一番店からは一歩抜きんでた経営をされています。
この整骨院Aにとって、飛躍の契機はM&Aです。
成功のポイントは、M&Aで店舗展開のスピードを早められたことと、
譲渡企業の従業員との信頼関係の構築に注力されたことです。
特に取得した整骨院の従業員を継続的に雇用し安心して働いていただくことが、
M&Aで業績を伸ばす一番重要なコツと言えます。
このように、昨今の2極化していく整骨院業界において、
M&Aは成長スピードを早める上での1つの重要な選択肢となります。
当コラムでは、
・統計データから見る整骨院業界の概況
・弊社整骨院企業300社越の会員様の実績数値
を基に、整骨院業界の現状を確認し、M&Aの動向とメリット・デメリット、取るべき経営方針について解説させていただきます。
統計データから見る整骨院業界の概況
◆柔道整復療養費の推移◆
平成30年時点の柔道整復療養費の総額は「3,278億円※昨対比ー93億円」。
2011年の「4,085億円」をピークにそこからは右肩下がりを続けています。
また、国民医療費は増加する中で、柔道整復療養費のみ減少傾向です。
これが近年の整骨院業界の時流であり、客観的事実です。
保険に依存した整骨院経営は厳しくなり、自費および事故分野を含めた業績アップへと経営のかじ取りを行っていく必要があります。
※厚生労働省HPより引用
◆施術所件数の推移◆
続いて、施術所(整骨院)件数の推移です。
令和2年時点の整骨院件数は「50,364件※昨対比+87件」。
過去推移は以下になります。
2014年→2016年:+2,452件
2016年→2018年:+2,053件
2018年→2020年:+287件
2018年までは2年スパンで+2,000件以上で推移していたものの、
一気に増加幅が狭まっています。
※厚生労働省HPより引用
◆柔道整復師数の推移◆
続いて、柔道整復師数の推移です。
2018年の就業柔道整復師数は「73,017名」。
2018年から2020年にかけて柔道整復師の合格者数は「+15,419名」ですが、
2020年の就業柔道整復師数は「75,786名」。
2018年→2020年にかけての増加人数はたった「2,769名」になります。
つまり、2018年→2020年にかけて整骨院業界を去った柔道整復師は「4,686名」にもなり、
ここ10年スパンで見ると「19,000名」もの柔整師が整骨院業界を去っていると言えます。
ここまで、統計からみる客観的な整骨院業界の現状をお伝えさせていただきました。
ここからは、整骨院業界に今後起こること/起きていることを箇条書きでお伝えさせていただきます。
①人材の獲得競争が激化、人件費・採用費が高騰している
②国家資格者、その他スタッフの賃金UP
③働き方改革にうまく適応できた整骨院企業だけが採用難時代を乗り切り、持続的に成長する
④二極化を勝ち抜くためには高収益経営が最低限の条件となり「人事生産性向上」に一層注力が必要
⑤人事生産性を徹底して高め、次にチャレンジするべくは「時間生産性」
⑥時間生産性向上のために
・DXおよびデジタル化(省人化・省力化・ICT化)
・ストックビジネスの導入
・治療技術革新および提供価値革新
⑦「健康産業」はまさに時流ビジネスであり、新規参入する整骨院経営者がますます増える
⑧その中で業界破壊者(ディスラプター)の登場の可能性もあり
⑨M&Aの活発化(売りも買いも)
⑩時流に乗れずに財務状況が悪化し廃業件数がさらに増加する
⑪本業(整骨院)以外の事業に挑戦し両利きの経営を実現することが必要になる
つまり、整骨院業界における課題として、
・保険に頼った経営が厳しくなり、自費および事故の売上の柱を太くしていき、生産性向上=収益性向上を実現する必要がある
・柔道整復師数が減少しており、人材確保が難しくなる
・「健康産業」は時流ビジネスであり、業界外からの競合企業が出現しつつある
そのため、業界が2極化する中で、成長スピードが早い企業はM&Aを行い、
生産性向上および人材確保→出店スピードの向上を図っています。
整骨院業界のM&Aの特徴
ここまで、整骨院業界の概況について解説させていただきました。
競争環境の激化により再編やM&Aが活性化する中で、整骨院業界で特に目立っているM&Aの特徴は以下になります。
①有資格者(柔道整復師/鍼灸師)を確保するためのM&A
先述の通り、整骨院業界は、整骨院企業が増加傾向にある中で、柔道整復師といった有資格者は整骨院業界全体を見ても減少傾向にあります。
整骨院は地域密着型のビジネスであり、各エリアでシェア率を高めていく上で、整骨院の事業規模の拡大は必須です。
また、未経験者を資格取得まで育成すると大変な労力がかかります。
そのため、M&Aを活用することにより、経験・ノウハウが豊富な有資格者の人員数を確保しています。
②M&Aで本業(整骨院)とシナジーを生む多角化経営の実現
整骨院業界では、参入する事業者が増加する中で、従来の急性・慢性的な症状を抱えた方をターゲットとするビジネスモデルのみでなく、美容/トレーニング/介護・福祉といった、多様化する患者様ニーズに対応するビジネスを展開する企業も増加しております。
そういった意味で、M&Aを活用し、従来の本業のみならず新しいビジネスモデルを創出する動きも活発化しております。
③小規模案件のM&A事例が多数
整骨院業界は、年商3,000万~4,000万以下の小規模の企業が多い特徴があり、
M&A事例も事業譲渡で1~3店舗を譲渡する小規模案件のものがメインとなります。
買収側は先述の通り、店舗展開のスピードを早めることを目的としていることが多く、
個人の事業者とニーズが一致するため、整骨院企業と個人のM&Aが成約しやすいといった特徴があります。
M&Aにおけるメリット・デメリットとは
整骨院における買い手・売り手それぞれのメリットとデメリットとしては、次の通りです。
①買い手
【M&Aメリット】
・複数店舗の買収により、一気に拠点展開が進められる
・管理コストを一元化することで、収益力がアップ
・規模拡大による外部信用力向上により、資金調達しやすくなる
【M&Aデメリット】
・期待した成長が望めない可能性
・高値での買収により、投資回収が遅れる可能性
・買収後に発生する従業員/得意先の離散が起こる可能性
②売り手
【M&Aメリット】
・株式や事業の対価として資金を得ることができる
・会社が残り、資本力が増大することで大きな成長が見込みえる
・代表者保障/自宅担保が外れる
・従業員の雇用が維持できる
【M&Aデメリット】
・自社の議決権がなくなる
・想定した金額で売却できない
・売却条件を受け入れてもらえない可能性
・経営から外れる焦燥感
買い手としては「時間を買う」というのがM&A最大のメリットとなります。
整骨院の場合、自社出店のスピードと比較すると5店舗以上の買収の場合、M&Aの方が格段に早いのはいうまでもありません。一方、あまりに過度なシナジーを期待して失敗するケースもあるので注意が必要です。
売り手としては、自社の株式がお金になるという事が大きなメリットとなります。
本来ご子息に引き継ぐような事業承継では、対価は発生せず、むしろ贈与税・相続税の対策が求められることが多くあります。M&Aによって資金を確保することで、老後の生活資金や将来の不安解消ができるというのはとても合理的です。
これらのメリット・デメリットをしっかりと理解したうえで、まずはM&Aを検討する必要があります。
整骨院がM&A(譲渡)を検討する際の重要なポイント
①自身の求める条件の整理と優先順位
自身の求める条件をまずは考えておき、優先順位をつけていきます。M&Aは相手(買い手)がいるため、よほど経営状況が良くない限り、全てが要望通りになることは少ないため、妥協できるところ、できないところは予め整理しておきます。
②自己分析による企業価値算定での相場把握
自社の決算状況がどのようになっているのか、他社から見たときにプラスとなる点とマイナスとなる点を掘り下げていきます。その上で整骨院業界のM&A相場に合わせた企業価値算定を行い、今譲渡したらいくらくらいなのかを把握しておきます。おおよそのセカンドライフの必要資金が現状の企業価値に見合うのであれば、前向きに検討していきます。
③立地条件や柔整師の人員の確認
譲渡した後もその店舗が自走できる状態が理想的といえます。
まずは賃貸物件であることが多い業態のため、賃貸契約が譲渡後も継続できるかを確認しましょう。
稀に契約期限が到来しており、譲渡前のオーナーとの縁故などでの契約だった場合は、譲渡後の更新時に家主から家賃の増額や契約の継続を断られる可能性があります。
また、人員としても柔整師が全て抜けてしまった場合、買い手側から派遣しなければならない事態となり、買い手がつかない可能性もあります。
ある程度オーナーがいなくても自走できる仕組みにしておくことが大切です。
これらのポイントを整理しつつ、買い手候補との交渉を行っていくわけですが、買い手の見るポイントに対する対処がそれぞれ必要となります。また交渉が効きやすいタイミングの見極めも大切となります。
最後に
ここまでお読みいただきありがとうございました。
整骨院業界は2極化が急速に進む中で、法人・個人問わずM&Aが活性化しています。
高齢社会による需要増加や激化する競争環境に備えて、今後もさらに業界再編が進むと想定されています。
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