近年、整骨院・接骨院での不正請求が問題視されるケースが増えてきました。
厚生労働省によると、柔道整復師に対する指導・監査等の実施状況は、2015年の1年間で全国4000件以上にも上ります。中止及び中止相当とした件数は年間で25件あることが報告されています。
(参考: 柔道整復師に対する指導・監査等の実施状況(地方厚生(支)局別)https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000148869.pdf)
整骨院・接骨院は保険医療機関ではなく、また施術を行う柔道整復師も医師ではないため、
健康保険でかかることができるのは、限られた範囲となります。
改めて、今回のコラムでは、健康保険の適応範囲となる症例と、健康保険扱いになる症例をパターン別にみていきましょう。
◆健康保険の適応範囲内(保険請求の対象内)となる症例について
健康保険の適用となるのは、外傷性が明らかな場合に限られます。具体的には下記のような症状に対して健康保険が適応され、保険請求が可能となります。
□骨折・脱臼(応急手当の場合を除いて、医師による同意が必要です。)
□急性の打撲、捻挫、挫傷、肉離れ
□原因が明らかであるぎっくり腰、筋違いなど
これらの項目はいずれも内科的原因による疾患は含められず、いずれの負傷も慢性的な状態に至っていないものに限られます。
◆パターン別にみる健康保険扱いになる症例について
パターン1
日常生活での疲れによる肩こりを訴えられている患者様に対して
→このような単なる肩こり、筋肉疲労などに対する施術に健康保険を使うことはできません。
パターン2
仕事から帰宅する途中で骨折した患者様が、当院に来院された患者様に対して
→このような患者様に対しては、健康保険請求ではなく、労災保険での扱いとなります。ただし、法人(5人未満の法人除く)の役員としての業務上の負傷においては、労災保険の適応範囲内ではなく、健康保険の範囲内となります。
パターン3
部活動でケガをされ、医療機関で治療中の患者様が、早く治したいという理由で整骨院にも通院されている患者様に対して
→医療機関と重複して受診されている場合においては、整骨院では健康保険範囲外となります。
パターン4
長期間に渡る関節痛が原因で、痛みが生じるたびに来院される患者様に対して
→症状の改善がみられないような場合や漫然とした長期間に渡る施術に対しては健康保険を適用することができません。
以上のようなパターンでは、健康保険の適応範囲外となり、施術費用は患者様の全額自己負担となります。
しかし、一部の整骨院においては、腰痛や肩こり、慢性的な体の痛みや体の不調に対して行った施術を「捻挫の治療」などと偽って、健康保険組合に不正請求をしているケースがありました。
整骨院が患者様に代わって各健康保険組合に請求できる制度を悪用し、不正な請求が行われることを危惧する厚生労働省は、柔道整復師に対する指導・監査等の実施を強化し、健康保険請求に対する審査を厳格に定めるようになっています。
(参考: 柔道整復の施術に係る療養費関係
実際に、これまでの柔道整復療養費は、2011年をピークに年々減少しています。
・2004年・・・3370億円
・2007年・・・3830億円
・2009年・・・4023億円
・2010年・・・4068億円
・2011年・・・4085億円
・2013年・・・3855億円
・2014年・・・3825億円
・2016年・・・3636億円
・2018年・・・3278億円
更に、2014年時点で、長期間や頻回に対する対応策として「部位ころがし」を削減する内容指針が厚生労働省より出されています。
このような国の方針と時代の流れ、時流に沿った経営を行っていくためには、
整骨院において「自費率の向上」に本格的に着手し、実現していくべきだと言えます。
整骨院における自費分野をより一層深めていただき、
「保険内では提供できない施術内容まで提供できるようにしたい」
「当院に来院された患者様に対しては、より一層の満足感を届けたい、真の意味で健康になっていただきたい」
「雇用を増やして事業を永続させたい、安定した事業基盤を創りたい」
というような、患者様から選ばれ、求職者からも選ばれ、地域からも支持される整骨院になっていただければと思います。
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